特殊メイクや特殊造型は、コンピューターグラフィックスが進歩した現代においても
映像作品を作り出すのに必要不可欠な存在となっています。
大がかりで壮大な映画作品などではその精巧さや技術が度々取り上げられていますが、
ハリウッド映画のような大規模なものでなくても特殊造型の小道具はいたるところで私たちの目に触れています。
その一つに、日本で制作されているドラマがあります。
日本のドラマは低予算化が進んでいると言われていますが、
特殊造型による小道具が不要になることはこれから先もないでしょう。
ドラマはあるがままの事実を撮影し放送することが主要である報道やドキュメンタリーなどとは違い、
台本がある架空の世界を表現するもの。
現実にその場で起きていることをカメラに収められるわけではありませんから、
当然その画面内に映るすべてのものにリアルさがなければ視聴者は冷めてしまいます。
視聴者が注目しないような小道具でも、リアルとは違う部分があると違和感を与えてしまうのです。
画面の隅々まで徹底したリアルさを追求した作品は、たとえわずかな違いだったとしても、
ドラマの質を格段に上げることができると言えるのです。
ファンタジー要素の強いドラマ作品はもちろん、日常を描いたドラマでも特殊造型は存在しています。
一朝一夕では撮影できない植物の育つ過程だったり、人の言葉が理解できない動物だったりと例を挙げれば数え切れません。
さらに特殊造型は時として人そのものを作ることもあります。
ドラマの短い撮影期間内でも撮影開始時と終了時の見た目が大きく変わってしまう未熟児などは、
特殊造型で作成されることもあります。
撮影を許可されていたとしてもタイミングよく未熟児が産まれる保証もありません。
ホームドラマや産婦人科を描いたドラマなどでは非常に重宝されます。
しかしこれは人間そのものを特殊造型で作り出していますので、違和感を与えやすいものでもありますから、
確かな技術がないとなかなかリアルに表現することが難しいでしょう。
また、妊婦のお腹を特殊造型で作り、よりリアルに見せるために胎動を生み出す仕掛けを入れ込んだ例もあります。
痩せている人を太らせたり、若い人を老化させたりといった特殊メイクと同じように、これらはとても身近なものです。
細部にまでリアルさを表現することができれば、視聴者を冷めさせないだけでなく、
演じている役者も気持ちが入りやすくなり、よい演技ができるようになるでしょう。
日常でよく目にする小道具などの特殊造型においては、リアルすぎてそれだと気づかれないことが、実は最高の評価なのです。