特殊造型や特殊メイクが活躍する場は映画やドラマなどの映像作品だけではありません。
直接観客と対面するイベントやテーマパークでのパレードなどでも特殊造型や特殊メイクは必要不可欠です。
その中でも舞台は演目の世界観を表現できるか否かといった点で特殊造型のクオリティが大きく関わってきます。
映像作品に使用する特殊造型や特殊メイクは最高の物ができるまで時間をかけて作りあげ、
映像に記録して繰り返し使用する事ができます。
しかし、イベントやテーマパークの舞台では1ステージごとに役者に特殊メイクが施されるため、
毎回全く同じメイクにすることは不可能です。
特殊造型においても同様で、制作したものを毎回使用しますが、客席から特殊造型を見た時に
毎回絶対に同じように見えるとは言い切れません。
なぜなら、微妙なライトの当たり方だけでも客席からの見え方が違って見えるからです。
さらに、映像作品ではCG技術などで特殊造型を補完することができますが、
舞台ではその場で実際に存在するもので勝負しなければなりません。
そのため舞台に立つパフォーマーの一瞬一瞬の姿が観客の心に響くよう、
特殊メイクや特殊造型にも技術が求められます。
映像作品の場合はカメラが寄れるため非常にディテールの細かい造型やリアリティのあるメイクが求められます。
もちろん舞台でもリアリティは大切ですが、観客は舞台の上の役者や造型物を間近に見ることはありません。
常に一定の距離、もしくはとても離れた場所から見ることになります。
そのため、舞台上にあるものは、遠くから見ても認識できるように制作しなければなりません。
特殊メイクに限らず、舞台メイクは濃いという特徴がありますが、これは客席の後ろの方からでも
目と口の位置を認識できるようにするためです。
細かい部分を作りこむのは舞台のクオリティを上げる上で大切なことではありますが、
細かい部分に気を取られすぎて全体を見たときに埋没してしまうようでは元も子もありません。
また、舞台は照明や汗なども大きく影響するため、気を付けなければならない部分はたくさんあります。
ダイナミックさと繊細さを併せ持つ特殊造型・特殊メイクが求められるため、
映像作品の特殊造型とは違う発想を持たなければならないのです。
特に現在、アニメや漫画など2次元作品の舞台化が評判を呼び、次々と公演されています。
現実世界にはない要素が濃い作品が増えている中で、舞台映えする特殊造型技術は舞台化の肝ともいえるでしょう。